「65歳まで生きる人が90%を超える時代に突入し、年金、医療などの社会保障給付費は年を追うごとに増加の一途をたどっています。そもそも、現在の年金制度が成立したのは昭和初期のこと。平均寿命は60歳代、55歳定年という20世紀型の社会が前提となった制度です。現在の日本はといえば、平均寿命は男女共に80歳を超え、近い将来、3人の高齢者を4人の現役世代で支える時代へと入りつつあります。退職年齢の引き上げなど、これまでにも多くの施策が打たれてきましたが、それだけでは賄いきれない状態へと加速的に進んでいます」(駒村教授)
「なぜ、このようなことが起こったのか。これには多様な要素が関係しています。公的年金制度は、工場労働が広まる産業革命以降、福祉国家の普及のなかで、19世紀から20世紀にかけて先進国に広まりました。当時の社会は工場などでの肉体的な労働によって賃金を得る労働者がほとんどでした。体力を使う仕事において、55歳定年制は利にかなっていたのです。その後、高度経済成長期などを経た日本はデスクワークを中心とする労働者の人口が増加、体力ではなく知力で勝負する働き方は定年退職年齢の引き上げにつながりました。現在では多くの会社が65歳まで継続雇用できるように努力をしています」(駒村教授)