2023年10月7日のハマスによるイスラエル大規模攻撃以来、世界の多くの大学が人権重視の姿勢を鮮明にしています。大学の宝は表現の自由、学問の自由、人権の最重視といったリベラル精神と民主主義の追求であり、独立自尊を重んじる慶應義塾も同じ立場であることは言うまでもありません。人種・民族にかかわらず人権を最大限に尊重し、平和で協調的な社会を追求するための学問を進めることが私たち大学の使命です。
慶應義塾は、今年3月に世界16カ国からの大学長・副学長らを三田キヤンパスに招く「第5回U7+アライアンス学長会議」を主催し、平和と安全保障に資する現代の大学の役割を「東京声明(公式英語版、仮訳)」としてG7広島サミット議長の岸田首相に提出し、この内容の一部をG7広島サミットのコミュニケに反映することができました。
具体的にG7首脳に求めたことは、
1)平和で安全な世界のための大学での研究の支援とその成果を政策に反映させる仕組みづくりの推進
2)自国第一主義ではなく世界全体を俯瞰して行動できる人々を育てる教育体制整備の支援
3)紛争で避難を余儀なくされた人々への機会創出
4)公的かつ多国間での平和に対する責任の共有と協調の強化
です。
そして慶應義塾内では、1)、2)、4)に関する研究教育組織としてKGRI戦略構想センターを発足させ、2)、3)、4)に関するSDGsやDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進の一貫として、塾生会議や協生環境推進室などの活動を活発化させています。
戦争や紛争に巻き込まれている当事者たちは、世界の平和を客観的に考える余裕がありません。だからこそ、第三者的な立場での建設的なアライアンスが重要となります。自国第一主義の台頭は協調を阻害し分断を助長します。客観的に世界の状況を解析・理解し、建設的で持続可能な平和社会を樹立するための外交戦略を打ち立て、その実現に向けた説得力と行動力を発揮することが、直接的に紛争や戦争に巻き込まれていない大学に求められています。
慶應義塾はその分野を先導していきたいと考えています。